花田2020年5月7日7 分サリカ・ル・デルタの反乱 22 シマウマと由起子と定弘 彼――あるいは彼女は、顔を垂直に上げて集中して両耳を立てた。 前方の音を拾う。次の瞬間は耳を翻し、左右、後方の音を聴く。頬から首筋にかけての毛が風を含んでいる。嗅覚の奥に何らかの刺激があった。なにかいる。いや、なにかではない。 敵だ。...
花田2020年5月7日7 分サリカ・ル・デルタの反乱 11 島崎光 「――本当に大丈夫なんだな、サリカ」 黒髪の少年は屋上のふちに立っていた。 舌先が少し痺れている。緊張しているのだ。 少年の背にはサリカと呼ばれた何者かが立っている。当然だ、と声を発すると、どうやらその者は女であった。...
花田2020年5月7日6 分シークレットプレイスまず認識したのは季節だ。 石への日光の照り方からして夏なのは確実で、そうだ、石の階段を上っているのだった。 遅れて耳の奥から蝉の声がし始める。続いて暑さを含む空気が茫洋と感じられ、石の階段を上りきると、神社だった。 鳥居の奥に中ぐらいの拝殿があり、賽銭箱の前に誰かが座...